magic.wizards.com (追記:いきなりタイトルのこと言われてもなんのこっちゃなので該当のアナウンスへのリンクを追加)
非常に混乱している。混乱しているのでこの文章もきっと支離滅裂なまま終わるだろう。だが、この気持ちは吐き出しておく必要があるだろうと思ったので書いておく。
率直な感想
I think, true "Diversity" is the game in which we can play "Crusade" and "Jihad" for "Devotion", without any political context.
--@____zoe_____
事態がそう簡単には語れない、というのも「わかる」。しかし、本当に私は「わかって」いるのだろうか?
Invoke Prejudice が人種差別を想起させるというかまさにクー・クラックス・クランを元にした描写であることは私が最初にMagicに触れた2000年頃からも既に言われていて、当時でもこれはマズいんじゃないの?という人がいたのは覚えている。現代のアメリカの情勢からすればこれを公式トーナメントで使われたら困る、というのも納得は行く*3。しかし私は残りのものについて「差別を想起させる表現である」ということについて、理解が及ばなかったし、特にJihadとCrusadeについては踏み込みすぎだろう、とも思った。最初期のイラストがキリスト教的な描写であることと「すべての白のクリーチャーが強化される」ことの組み合わせで問題なのならば、トーナメントプレイ、特にビデオマッチにおいては他の版を、特に現代のMagicのストーリーを元にイラストが描かれた版を使うように誘導すればよいのでは、とも思った。
現代的には上位互換があるから問題は少ない気がするけど、宗教的イメージがついてまわるのが困るんであればこれについては「ビデオマッチでは5版以降の版を使ってね」としとけばよかったのではと思ってる。エルズペスvsテゼレット版とかいいイラストなのに… https://t.co/JVy5mqOTSh
— sylph01(self-quarantine-from-TL) (@s01) 2020年6月11日
これは私が「当事者の背景を理解していないから」なのだろうか?昨今のBlack Lives Matter運動もそうだが、「日本という人種差別の意識の薄い国で」「多数派として生きている」人間に、この問題の本質を理解し、この問題を語る術はないのではないか?
一方で、「言葉の用法を正す」「文化を修正する」ような方向に向かっている一連の抗議運動は、果たして本質的解決につながるのだろうか?コンピュータエンジニアリングの世界では「ブラックリスト・ホワイトリスト」や「マスター・スレーブ」という用語が問題である*4とされ、Rubocopは暴力的な警察を連想させるので名前を変えよ、とする運動が起きたりしている。Rubocopの名前変更のissueの中で、「本当に社会の人種差別問題を解決したいならばGitHubのissueで吠えるのではなくprotestの場にいけ」と言っている人がいたが、私もこのことには同意する。日常の言語の用法の中に問題があることを認識するのは大事なことだとは思うが、それに真っ先に飛びついてその結果に満足し、本質的な問題をそのまま放置してしまうのではないか?黒人の人種差別問題に抗議の声を上げている人たちは、つい何ヶ月か前にアジア人に対して「コロナ」「コロナ」と罵声をあげていたのは忘れてしまったのか*5?
以下の記事には非常に同意した。そう、「黙っていることは差別を黙認していることに等しい」と言われても、紋切り型の反対意見を述べられるほど私も思慮が足りていないわけではない。
結語
事態がそう簡単に語れないのは「わかる」。そして本当は私はこの事態を「わかっていない」だろう。しかし、この問題を真に「わかって」いる人などいるのだろうか?私も決して差別的発言を全く行わないということはないだろう。なのでこの問題について、安易に主流の意見に同調すること、安易に共感しやすいストーリーに乗っかることは私はしたくないしするべきでないと思う。自らの闇と向き合うしかないのだ。そしてそれは簡単なことではない。ハッシュタグをツイートしたり、表現の言い換えや文化の書き換えに喜ぶことでは解決しない。そして、この記事でこうやってわからないことを表明したところで解決する問題でもない。
英語を学ぶきっかけとなったゲームについて、また多くの国の友人ができるきっかけとなったゲームについて、このゲームの文化が書き換えられようとしていることが悲しいし、この決して簡単でないゲームを遊ぶ人間はこのような表面的な「解決」に満足せず本質的な解決に向けて向かってくれると信じている。
追伸
(つーかぞえさんがこの案件でBAN/資格剥奪されたらMagicやめうるぞ…少なくとも「今後積極的には買わない」程度にはやめうる)
— sylph01(self-quarantine-from-TL) (@s01) 2020年6月11日
冒頭に引用した川添さんの発言は確かに過激なところは多いが、私は彼の本判断を批判する主張が「差別を肯定する主張」であるとは思わないし、もしそのように捉えられて彼にトーナメントの出場停止処分やジャッジ資格の停止処分が下るならば、私はそのような判断を行うWizardsやジャッジコミュニティを信用できないし、Magicというゲームの「多様性」というものへの信頼を失ってしまうだろう。
この問題について私が読んだ他の方の記事へのリンク
ancovered-mochi.hatenablog.com
Educational Rundown of the long overdue Depictions of Racism in Magic Bannings: (with references) #MagicTheGathering
— MerfolkMagic (@MerfolkMagic) 2020年6月11日
1: Invoke Prejudice (1994)
This card is the most egregious of everything banned today for being blatantly racist. See artist details and '1488' reference below. pic.twitter.com/RhjnMmBjAq
追記(6/13): Scryfallの対応について
However, we want to be clear that we also believe that these changes are minor gestures within a grander scope of issues in Magic and within Wizards of the Coast.
We could set that goal aside in this instance and delete the images of these cards as Gatherer has done, but we believe keeping the images will enable people to understand and learn from this game’s past.
はああ〜〜〜〜〜〜〜〜Scryfallさんしゅき〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私はこの対応を強く支持します。CrusadeやJihadがsensitiveなのはRace(人種)の問題ではないのでもともとのWizardsの表現では不適切で(これについてはRich Shay氏のTweetも参照、"Islam is not a race"(3/4)とある通り)、これを"depict a sensitive real-world event"という表現で記述したのはよい対応と思います。また、完全になかったことにする代わりに警告の後ろに置くようにした対応も非常に評価できます。なかったことにしてしまったら後世の人は失敗から学ぶことができないわけですから…。